岡安秀士 Shuto Okayasu

YOU/あなた

2023.8.18 〜 2023.9.11

このたびOIL by 美術手帖ギャラリーでは、岡安秀士個展「YOU/あなた」を開催いたします。

岡安秀士は1990年生まれ、2015年に渡米し、以降ニューヨークを拠点に活動しています。本展では岡安独自の視点と深い洞察力によって生み出された新作を発表。アーティストとしての活動を開始して以降の、岡安の旅路を垣間見ることのできる場となります。

本展のテーマ「YOU」は、同タイトルの出品作品から名付けられました。近年、岡安は谷川俊太郎の詩やギリシャ神話からインスピレーションを得て、人間の存在や運命、愛について深く考察し制作を重ねてきました。幅3メートルを超える大作《You》では、それらの考察とともに、月の満ち欠けや時間の移り変わり、人と人のつながりを象徴的な構図で表現します。

岡安は、自身の作品制作において「街や日常のなかで丹念に観察したものを記録し、編集する行為」を大切にしていると話します。岡安の描く絵画世界では、ニューヨークの街を観察し記録した写実的な要素と独自の抽象性が融合し、印象的なブルーを基調とした世界観が展開されます。

また、自身の絵画における「観察」と「記録」という行為は、古代から現代までの芸術家たちによって繰り返され、探求されてきたものであると語ります。本展で発表される作品群も、現代社会における認識や感情、時間の流れを独自の視点で捉えて再構築したものといえるでしょう。岡安はさらに、ヒップホップのサンプリングの影響を受けながら、絵画の中での時間の変化や、再生と停止、異なる瞬間や感情を同じキャンバス上で共存させます。

岡安のアーティストとしての探求の成果を垣間見ていただき、その絵画世界に触れながら、日常の中に潜む人間の魅力や複雑さ、そして美しさをぜひ再発見してみてください。

 

  • 販売について

本展出品作品は、会場および、アートのオンラインマーケットプレイス「OIL by 美術⼿帖」にて販売します。

オンライン販売開始|8月21日(月)16:00〜

販売URL|https://oil.bijutsutecho.com/gallery/733

※作品はプレセールスの状況により展覧会会期開始前に販売を終了させていただくことがあります。

※オンライン公開は、会場販売開始後となるため、公開時点で売り切れの場合がございます。予めご了承ください。

 


 

  • ARTIST INTERVIEW|岡安秀士

本展開催にあたって、ニューヨークという環境での制作や、ヒップホップをルーツとする作品背景について岡安秀士に聞いた。

 

この世界は一体なんなのかを検証し続ける

 

──岡安さんは自身の作品制作について「街や日常のなかで丹念に観察したものを記録し、編集する行為」を意識して描いていると以前に対談で語っていらっしゃいました。この主題に行き着いた動機や、作品のコンセプトについて教えてください。

 

岡安秀士(以下、岡安) 私は物心ついた頃から絵を描き始めましたが、それは基本的には何か現実にあるものを写す行為でした。家族や恐竜、マンガやアニメなどをひたすら紙に描き写していました。もう少し大きくなって独自の世界を描こうとしても、それは完全なオリジナルではなく日常的に触れているものを寄せ集めて作っている、もしくはなんらかの影響を受けていることに気づいていました。

それからずっと絵を描き続け、それと同時に過去から現代までの様々な画家やアーティストたちについて学び、自分が素晴らしいと思う絵や作品と自分自身の絵を比べ、より自分にとって絵を描くことはこういうことだと考えるようになりました。

絵における「観察」と「記録」というのは現代からすると一見古典的な行為に思え、「再構築」または「編集」はより近代的な考え方に感じますが、私にとってこれら全ては古代から今までの画家が行ってきたこと、また画家やアーティストだけでなく、ミュージシャンやダンサー、思想家、科学者なども同じくすべてがこの行為を繰り返し続けて現代に至っていると感じます。この世界をどう認知するかは、これらを繰り返してこの世界は一体なんなのか検証し続けることであり、これからもずっと続いていくことだと思います。

この繰り返しと、その先にある永遠を渇望する行為そのものが自分にとっての画家でありアーティストであり、人間そのものだと感じます。

 

──下書きやドローイングなどの工程や、どこから描き始めるか、終わり方などはどのように決めていますか?作品の制作手順を教えてください。

 

岡安 始めはもっぱら日常的に撮り溜めた膨大な写真と、ドローイングが出発点になります。テーマが先にあることもありますが、ほとんどはドローイングと写真の中から選び集めて、絵画として形にしていく中でテーマが出てきたり、またより発展していきます。完成した後にテーマが何であったのかに気づくこともあります。要素(モチーフ)選びは制作プロセスを通してずっと行われて、最後まで画面上や頭の中で足したり引いたりしています。結局どの作品も自分の身の回りにあるものを組み合わせて行き、自分の見ている世界と自分自身のアウトラインを作っていく作業の様な感覚です。

 

──岡安さんの作品は独特な青色と、時間軸の異なるイメージの共存が特徴です。1枚の絵画の中で、朝/夜などの時間の変化、感情の移り変わりが絵巻物のようでもあり、逆にすべてのことが同時多発的に起きているという現在性も感じられます。ヒップホップのサンプリングからの影響もあるということですが、その影響について教えてください。また、どのように絵の構成を決めていますか?

 

岡安 ヒップホップは小学校5〜6年の頃に出会ったと思いますが、それと同じか少し前に現代アートと出会っていました。ヒップホップに惹かれた理由を当時ははっきりとは理解していなかったのですが、直感的にすごく現代アート(当時の自分にとってはモダンアートも含めて)に近い音楽だと感じました。ビジュアルだけでなく構造に共通点を感じていたと思います。

今考えるとデュシャンのレディ・メイドと同様に、すべての創造物をあからさまに構造としてとらえて、そのコントラストによって、アートとは、人間とは何かを打ち出していたのだと思います。そのコラージュのようなサウンドは音楽を構成する音の要素を思い起こさせ、それが織りなすシンプルでチグハグな違和感とハーモニーの共存している世界観に、当時小学生の自分は夢中になりました。そして今の自分がこの世界をとらえる上で非常に影響を受けています。後からいろんな音楽を聴くようになるとヒップホップ以前のジャズ、ハウスやテクノなど様々な音楽でも同様のことが行われており、自分の時代はヒップホップがそれらを吸収していった時代だったんだと気づきました。

また、ヒップホップだけでなく他の音楽もそうですが、その構造やループ性、再生と停止の機能、また曲を作る上で他の曲の一部を抜き出し、フリップしたり速度を変えるなどの加工を施しまた再構築していくプロセスも含めて、影響を受けていると思います。近年の大きい絵は、特に時間軸をベースに構成を考えています。絵画も音楽と同様時間という概念を画面の中でコントロールできるので。ひとつの平面上で様々な時間軸をコントロールできる、もしくは時間の概念をなくす、そこが他の記録媒体や表現方法に対する絵画の特異性だと今は思っています。

 

新作《YOU》と谷川俊太郎の詩『あなた』

 

──今回の個展にあたって、作品や制作方法で新たに挑戦したことはありますか?

 

岡安 メイン作品の《You》は特にシンボリックな構図に挑戦しました。シンメトリーに近い構図で月の満ち欠けと男女を主軸に、部屋の中と外の世界、1日の終わりと始まり、1ヶ月、1年の季節の移り変わり、再生と停止それぞれが繰り返すような、音楽のような絵画にしたいと思いました。またこの絵の発端も昨年銀座で発表した作品と同様に、谷川俊太郎さんのいくつかの詩が題材になっています。

特に強く影響を受けたのが『あなた』という詩で、もうひとつは『夜』という詩です。『あなた』は自分とは違うもうひとりの大切な存在である「あなた」を通して、理解したいと思うのと裏腹に、決して知ることのできない部分があるという絶望の中でそれを超える愛について書かれています。また「あなた」とは自分自身の反映であり、この世界自体であると感じます。

『夜』は、ひとりの詩人が夜空のスクリーンに映し出される生と死の繰り返しをお祈りしがら見ているという詩なのですがそこにクロソー、ラキシス、アトロポスという3人の女神たちの名前が出てきます。この3女神は合わせて“Moirai(モイライ)”と呼ばれ、ギリシャ神話では「運命」を司る女神とされています。

近年自分の絵には夜が舞台の作品が多かったのですが、それは制作する時間帯や、夜に人生やこの世界について、生きることと死について考えることが多かったためです。この詩をきっかけに神話の神を調べるようになりました。

実はこの3女神モイライの母親が「夜」を司る女神で、様々な神を産んでいるのですが、モイライのような運命を司る神や、「死」、「眠り」、「夢」、「愛欲」、「老い」、「苦悩」、「争い」など様々な人間の存在のありようを司る神々が生まれてきたことがわかりました。このことから古代の人々も現代の人たちや自分と同じように、夜の闇の中で人間とは何かなど様々なことに思いを馳せ、それらが神格化されていることを感じました。

 

──今回の展覧会を準備するなかで、発見や新たな気づき、心境の変化などはありましたか?

 

岡安 毎回そうなのですが何か大作が終わると、そこで得た新たな物とわからなくなったことが拡大していって、次への期待と不安が同時にやってきます。ですが関係ないと思っていた過去のまだしっかりとした形になっていない自分の作品や行いがこの絵に繋がっているんだとあらためて感じます。それが表面に出てなくても。すべての作品が毎回自然にこうなった、完成したというかこうならざるを得なかった。これしか作れなかったと感じています。

 

──制作をするうえでのインスピレーション源はなんですか?

 

岡安 日常出会うなかで自分に引っ掛かるものすべてと、過去から現在までの素晴らしい作家、作品たち、前を走る偉大なアーティストたちです。

それは画家や現代アートだけでなくミュージシャンやダンサー、詩人、哲学者など他のジャンルの方も同様です。

 

──自身の作品を、鑑賞者にはどのようにとらえてほしいと思いますか?

 

岡安 具体的にあるわけではありませんが、何気ない日々の繰り返しの中で、身の回りにあるものだけでひとつの世界を創造できると感じて欲しいかもしれません。

 

ニューヨークという環境と創作

 

──2015年に渡米し、現在はニューヨークを拠点に活動されています。近況を教えてください。

 

岡安 現在はほぼ毎日スタジオにいるので、そこまで頻繁に外にでて人と接しているわけではありませんが、スタジオへの道中や少ない中でも違う文化の人と接することが今の自分や絵を作っていることは疑う余地もありません。他の街も同じかもしれませんが、この街はとてもコントラストが強く、様々な文化や人々の共存から生まれる衝突と調和していこうとする動きとそれらの繰り返しを肌で感じています。

 

──影響を受けたアーティストや、意識している作品はありますか?

 

岡安 ピーター・ドイグ、ジュールス・デ・バランクール、エドワルド・ムンク……影響を受けている画家はたくさんいます。宮崎駿さんの作品もそうですし他の様々なジャンルの作家からも影響を受けます。近年は谷川俊太郎さんの詩にものすごくインスピレーションをもらっています。

 

──ニューヨークと日本のアートシーンについて、どのように感じていますか? 作品への反応やアーティストの受け入れられ方などに違いはありますか?

 

岡安 近年日本にいないので分からない部分が多いのですが、最近日本を含めアジアのアートマーケットやSNSでよく見るペインティング作品は自分が思う「絵画作品」が少ないように感じます。頻繁に見かけるのは、ある意味何かでパッケージングされて、そもそもの創作趣旨とは離れているようにも思えるものです。ペインティング、絵画作品の定義、バリエーションが日々拡大していく中で、より絵画とは何かを考えてしまいます。

ですがもちろんその中でも素晴らしい作品もあり、ふとギャラリーに行けば良い意味で得体の知れない力を持つ作品に出会うことがあります。同世代のでもすごいアーティストがたくさんいます。それはニューヨークだけでなくきっと日本もそうだと思います。日本は色んな意味で日本人らしい特徴があると思うので、今回の帰国でいろんな作品に出会えるのは楽しみです。

 

──今後の目標や夢を教えてください。

 

岡安 年を追うごとにすり減っていくいくつかのものがある感覚がありますが、その中でもずっと残っているのはすごい絵を描きたいという気持ちです。この気持ちだけは忘れずやり続けたいと思います。

 

(2023年7月22日メールにてインタビュー)

 

 

  • 展覧会概要

岡安秀士「YOU/あなた」

会場|OIL by 美術手帖ギャラリー

会期|2023年8月18日(金)〜9月11日(月)※会期中無休

開場時間|11:00〜21:00

オープニングレセプション|8月18日(金)19:00〜21:00

入場|無料

主催|OIL by 美術手帖

お問い合わせ| oil_gallery@ccc.co.jp

※OIL by 美術手帖の営業時間は館の営業時間に準じます。状況に応じて変更の可能性がございます。最新の情報は渋谷PARCO公式ウェブサイトをご確認ください。 https://shibuya.parco.jp/

Artist Profile

岡安秀士 Shuto Okayasu

1990年埼玉県生まれ。2014年東京造形大学グラフィックデザイン専攻卒業。15年に渡米し、以後ニューヨークを拠点に活動。写真やドローイングなど日常の膨大な記録を画面の中に再構築し独自の心象風景を描く。主な個展に18年「Daidarabotchi」(Space776Gallery ニューヨーク、アメリカ)、20年「Midnight Tour」(同)、 21年「The Night Has a Thousand Eyes」(同)、22年「みみをすます/ WHISPER OF THE MIDNIGHT」(銀座 蔦屋書店アートウォール、東京、日本)。アートフェアへの出展に、21年 「Volta Basel Art fairs」 (バーゼル、スイス)22年「Volta New York Art fairs」、(ニューヨーク、アメリカ)などがある。

EVENT

オープニングレセプション

8月18日(金)19:00〜21:00 予約不要・入場無料。作家も在廊予定です。どなた様もお誘いあわせのうえご来場ください。お待ちしております。