このたびOIL by 美術手帖ギャラリーでは、品川美香個展「昼と夜」を開催いたします。
品川美香は1988年熊本県生まれ。2016年に京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)大学院修士課程を修了し、関西を中心に国内各地で作品を発表。鮮やかな色面の構成と植物の装飾的な表現、そして品川の代表的なモチーフである子どもの姿により、心象風景を描き出してきました。
品川の作品の原点にあるのは、自身の記憶のなかにある原風景です。自分自身や他者、また人以外の世界認識への「わからなさ」を考えながら作品にしていくという品川は、これまでに過ごしてきた時間のなかに浮かびあがる風景や思いをコラージュしていくような感覚で絵を描いていると語ります。子どものモチーフはそれらの気持ちの拠り所であり、雑多な現実と夢想の非現実をつなぐ無垢な存在です。描かれた子どもは匿名的な存在でありながらしっかりとした存在感を放ち、その瞳の中には無限の宇宙が光り輝いています。
本展で発表される幅5メートルの大作《昼》では、品川が幼少期を過ごしたふるさとの情景である雲仙普賢岳を背景に、自然への畏怖と儚くも力強い生命が表現されています。また、品川にとって近年の妊娠・出産という個人的な経験は、連綿と続く生命の歴史や、大きな世界と小さな自分との繋がりを意識した出来事でした。世界で同時多発的に発生したコロナ禍と、新たな生命の誕生という小さくも尊大な経験の対比から生まれた本作は、「子どもを生み育てるというひりひりとした体験を忘れないように残しておきたい」という作家としての強い気持ちが投影されています。
美術史や古典美術も参照しながら、親密さを感じさせる品川美香の作品。その世界に身を委ねれば、誰の記憶の中にもある子ども時代の原風景を発見することでしょう。ぜひ会場でご覧ください。
■アーティスト・ステートメント
コロナ禍に子どもを産み、母になった。
いのちが繋がっていくこと。私という存在が大きな流れの中の小さな小さな一部なのだということを改めて体感した。
十月十日おなかの中で大切に育てたわが子を、何よりも愛おしく思うと同時に、自分の命に変えてでも守らなければいけないという重圧に押し潰されそうだった。産まれて間もない赤ちゃんは、まだ人になりきっていない剥き出しの命そのもので、外の世界に出たことに気がついていないそれのゆっくりとした動きは、昆虫のようでもあり、アンドロイドのようにも思え、神様や仏様のようでもあった。そして、ついさっきまで私の内臓の一部だったそれとの圧倒的なコミュニケーションの不可能性のようなものを感じた。
月日をかけて肉をまとい、こちらの世界と接触していく様子は、未知の生命とのファーストコンタクトだった。ヒトは皆こうして人になっていくのだと思った。
あらためて私自身の小さな物語を、赤ちゃんが手で触り口に入れて世界を確かめて認識していくように一つひとつ確かめ描き出すことで、まだ知らないことに触れたい。
品川美香
■販売について
本展出品作品は、会場・アートのオンラインマーケットプレイス「OIL by 美術⼿帖」にて販売します。
オンライン販売開始|12月3日(土)16:00〜
販売URL|https://oil.bijutsutecho.com/gallery/733
※オンライン公開は、会場販売開始後となるため、公開時点で売り切れの場合がございます。予めご了承ください。
■展覧会概要
品川美香「昼と夜」
会場|OIL by 美術手帖ギャラリー
会期|2022年12月2日(金)〜12月26日(月) ※会期中無休
開場時間|11:00〜21:00
入場|無料
お問い合わせ| oil_gallery@ccc.co.jp
※OIL by 美術手帖の営業時間は館の営業時間に準じます。状況に応じて変更の可能性がございます。最新の情報は渋谷PARCO公式ウェブサイトをご確認ください。
https://shibuya.parco.jp/
Artist Profile
品川美香
1988年熊本県生まれ。2016年京都造形芸術大学大学院修士課程修了。現在は大阪(SUPER STUDIO KITAKAGAYA)、京都を拠点に活動。「私とは何か、人間とは何か」というテーマを軸に絵画を制作している。近年の主な展覧会に、19年「Universal Music Art Project 17」(ユニバーサルミュージック、東京)、20年ホテルアンテルームソウル常設(韓国)、「ANTEROOM NAHA_Phase 2020」(ホテルアンテルーム那覇、沖縄)、21年 個展「わたしが魚だったころ」(京都)、「Up_01」(銀座蔦屋書店GINZA ATRIUM、東京)、22年「Le Metté Adeline(ルメテ アデリン)アートラウンジプロジェクト」(岡山)など。